依頼者は、地下鉄の構内を別の用事があり、行ったり来たりしていました。すると、たまたま同時刻に発生した痴漢事件の犯人として疑われ、逮捕されてしまいました。 同種の前科があったことや、痴漢事件のあった同時刻に付近をうろうろしていたため、疑いをかけられ、逮捕されてしまったのです。 弁護人が、依頼者から、当時の事情について入念に聴き取りをしたところ、依頼者が無実であることを確信しました。 そして、取り調べについては徹底的に黙秘する方針を助言しました。 依頼者が犯行をしていない以上、捜査機関が依頼者の犯行を裏付ける客観的な証拠を確保していないはずです。被害者が何らかの誤解に基づき、依頼者が犯人であると供述している可能性はありますが、あいまいな供述であれば、被害者の供述のみで起訴に踏み切るのは検察にとってもリスクがあります。 取り調べに応じるということは、捜査機関に証拠を提供するのと同じです。言い分がある場合には、弁護人が供述調書を作成し、裁判所に提出すればよいだけです。わざわざ、捜査機関に、証拠を提供する必要はありません。 犯罪を証明する責任があるのは、検察官です。弁護人は無罪を証明する必要はありません。 えん罪の可能性がある場合は、極力取り調べに応じることなく、黙秘するすべきなのです。 本件は、勾留期間の満期まで身柄が拘束されてしまいましたが、嫌疑不十分により、不起訴処分となりました。 刑事弁護の結論としては良い結果となっていますが、そもそも無実の罪で20日間も勾留されてしまったことは不運というほかありません。