受刑者の逃走について(開放的刑事施設のあり方)

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 平成30年4月8日、愛媛県にある松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走するという事件が発生しました。
 松山刑務所の大井造船所は、全国に4ヶ所しかない開放的施設として指定された刑事施設です。
 普通の刑務所や拘置所は、一般の方が想像されるように、受刑者の逃走を防ぐため、高い壁やフェンスで囲まれ、居室にも鉄格子が設置されています。
 ところが、大井造船作業所のような開放的施設では、壁やフェンスがないだけでなく、造船所という名のとおり、ごく普通の工場と同じような環境で作業が行われています。
 このような処遇が行われているのは、一般社会にできるだけ近い環境下で処遇を行うことで、受刑者の自発性や自律性を涵養し、社会復帰を円滑にするためという目的があります。
 もちろん、凶悪犯の長期受刑者を開放的刑事施設で処遇することは適切ではないので、逃走の可能性の低い、比較的「優秀な?」受刑者が選定されることになります。
 ところが、大井造船所では、昭和36年9月に開設以来、17件20名の逃走事件が発生しています。
 そのため、今回の事件を受けて、法務省では、原因を調査するため、委員会が設置されました(松山刑務所大井造船作業場からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会)。
 同委員会で作成された報告書によると、今回の逃走事件が発生した主要な原因として、受刑者による自治会活動に問題があったのではないかとされています。
 同作業所における自治会は、場長の指名により、自治会長、リーダー、安全推進委員等の11の役割責任者(「自治委員」)が置かれ、作業その他の生活全般にわたって、自治委員を中心とした役割活動が行われていました。この自治委員が、下期生や新入生に対し、指導を行うなどの権限を付与されていました。
 今回、逃走した受刑者は、軽微な遵守事項違反を2回行ったことに対し、受刑者全員の面前で職員から注意を受け、自治会長以下の自治委員から厳しく叱責されるなどした上、自治委員の指名を解かれたことなどから、プライドを傷付けられ強く落胆し、大きな挫折感を抱き、作業場での居場所がなく職員や受刑者との人間関係から逃れたいと考え、逃走を決意するに至ったもの、とされています。
 このような上下関係,上位の者に対する権限付与が,逃走の原因とみられています。
 この点、マンデラ・ルールズの規則40(旧規則28)は、次のように規定しています。
1.いかなる被拘禁者も、施設業務で、規律維持に関与はしないものとする。
2.しかしながら、この規則は、被拘禁者の自治を基礎とする制度の適切な活用を妨げ
 るものではなく、この制度では、職員の監督の下に、特定の社会的、教育的もしく
 は体育的な活動またはその責任が、処遇上の目的で組み分けされた被拘禁者に任さ
 れる。
 マンデラ・ルールズの規則28(1)は、規律に関する権限を特定の部類ないし等級の被収容者に与えることを明確に禁止しています。すなわち、被収容者に対する規律に関する権限を行使できるのは、刑事施設の職員だけということです。

 このように、委員会の報告を受け、松山刑務所の開放処遇の問題点が明らかになりました。ただ、すべての開放的処遇がダメだということにはなりません。松山刑務所においても、自治会のルールを修正し、逃走を防ぐ仕組みを検討することで、うまく機能することが期待されます。
                                       以 上
平成30年11月12日(月)

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弁護士宮本大祐コラム

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