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自白の心理学(岩波新書、浜田寿美男著)という本を読みました。
「自白は証拠の女王」などという言葉があるくらい、自白は、被告人を有罪に認定する上で、極めて重要です。重要であるからこそ、捜査機関は、被疑者を必死になって取り調べ、自白を獲得しようとします。過去を遡ると、捜査機関が被疑者に自白を強要した結果、嘘の供述調書が作成され、多くのえん罪事件が発生しました。
もちろん、真犯人が罪を免れるため、嘘を付くことも多いでしょうから、捜査官としては、あの手この手で自白をさせる技術が必要となることは理解できます。犯人も重大事件になれば、刑も重くなりますから、必死で嘘を付くことでしょう。
しかし、有罪であることを決めてかかって、取り調べをしていくやり方には大きな問題があります。あまりにも過酷な取り調べは、やってもいない犯行をやったと言わせてしまう危険があるのです。無実の被疑者は、たとえ殺人事件のような重大な犯罪、つまり有罪になれば極刑もあり得るような事件であっても、嘘の自白をしてしまうような信じられない状況があるのです。
通常、どんなに精神的に頑強な人であっても、手錠をかけられて逮捕され、突然、日常生活から遮断されたら、相当な心理的ダメージを受けます。接見禁止の措置が取られた場合には、家族とも会うことができず、会えるのは弁護人だけという孤立無援の状況となります。そして、留置場の中で、食事、睡眠、排泄といった基本的な生活のすべてが捜査機関の監視下に置かれます。
そのような状況下で、犯人であることを決めつけられ、自白するまで取り調べが終わらないとしたら……、何度もやってないと言っても信じてもらえないとしたら……。
心理学的には、目の前の苦痛から免れるために、遠い先の試練が霞んで見えてしまうこともあるのだそうです。また、捜査官は信じてくれないが、裁判官は信じてくれるだろうという思い込みもあるかもしれません。
とにかく、そのような特殊な状況が、無実の人に、嘘の自白をさせてしまうのです。この本は、その心理的メカニズムがとても良く書かれています。
近年、このようなことを防ぐために、取り調べ状況をすべて録画するという試みが始まっています。取り調べの可視化などと言ったりします。えん罪を防ぐ試みとしては、大変効果的な制度といえるでしょう。すべての事件で、可視化が実現されることが期待されます。
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