交通事故 – 危険運転致死傷罪

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3危険運転致死傷罪

1 法定刑

人を負傷させた場合、十五年以下の懲役(準危険運転の場合は十二年以下)
人を死亡させた場合、一以上二十年以下の懲役(準危険運転の場合は十五年以下)
アルコール等影響発覚免脱罪  十二年以下の懲役

2 どのような罪か?

飲酒や無免許で運転しながら、人を死傷させるという重大な結果を招いたにもかかわらず、単なる過失犯の規定で処罰するのは軽すぎるという批判から、被害者の強い要望を受けて平成13年に新設された犯罪です。

しかし、同罪を適用するためのハードルが高く、悪質な運転者であっても、適用することができないケースが多かったことから、さらに、平成26年5月20日からは、自動車運転死傷行為処罰法が施行され、軽度の飲酒でも危険運転致死傷罪が適用できることになりました。
また、飲酒の発覚を免れるために、事故後さらに飲酒してごまかそうとした場合や、逃げて血中のアルコール濃度を減少させたような場合も処罰されることになりました。また、無免許の場合は、刑が加重される規定も加わりました。

①酩酊運転

「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」であることが必要であり、道路交通法上の酒酔い運転罪よりも要件が厳しくなっています。
また、お酒だけではなく、薬物や麻薬の摂取により正常な運転が困難な場合も該当します。脱法ドラッグにより「正常な運転が困難」であったことが認められ、有罪判決を受けた事例もあります。

②制御困難運転

制御することが困難な程度のスピードを出して運転していた場合です。速度違反のように、何キロオーバーということが数値で決まっているわけではなく、道路状況や事故状況に応じて判断されます。

③未熟運転

無免許運転や運転技術が極端に未熟であるにも関わらず運転した場合です。

④妨害運転

急な割り込みや、あおり運転等の危険な運転により、他車のハンドル操作を誤らせたような場合です。

⑤信号無視運転

文字通り、赤信号を殊更に無視するような場合で、かつ、危険を生じさせる速度で運転したような場合です。

⑥通行禁止道路運転

飲酒無免許のブラジル人が道路を逆走して、横断歩道を自転車で進行中の被害者をひき逃げしたという痛ましい事件が起きました。しかし、飲酒の程度が軽かったなどの事情から危険運転致死罪が適用されませんでした。この事件に対する批判から制定された類型です。

⑦準危険運転致死傷罪

「正常な運転が困難な状態」までいかなくとも、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で「正常な運転が困難な状態に陥り」人を死傷させた場合に成立します。危険運転致死傷罪の適用のハードルが高かったことから、飲酒や薬物による影響が比較的軽度であっても同罪が成立しうることになりました。

⑧アルコール等影響発覚免脱罪

アルコールや薬物の影響により危険運転に相当する状態で事故を起こした場合に、飲酒していたことがばれるのを防ぐため、さらにお酒を飲んだり、血中アルコール濃度が下がるまで逃げるなどした場合に処罰されるようになりました。

⑨無免許による加重

①から⑧までの罪を犯した者が、無免許だった場合、刑がさらに重くなることになりました。(③は除く)

3 弁護方針

自動車運転過失致死傷罪と異なり、本罪の場合は、意図的に飲酒したり、乱暴な運転をしているため、被害者感情が極めて強いです。通常の交通事故基準の被害弁償をしただけでは、許してもらえないことも多く、場合によっては被害者参加制度を利用して、被害者が法廷で被害感情を述べることもあります。

裁判員裁判事件となるため、法律の素人である裁判員に対しても理解を得なければなりませんので、弁護活動は容易ではありません。

それでも、弁護方針としては、まず、被害者との示談を優先して考えていくべきでしょう。
被害者が、示談金を受け取ってくれない場合は、慰謝料相当額を法務局に供託したり、贖罪寄付をしたりすることもあります。また、民事訴訟を提起された場合は、それに対応していかなくてはなりません。
被害者が死亡している場合は、葬儀やお墓参りに出向くことも有利な情状となります。もっとも、被害者の心情に配慮して慎重に対応することが必要です。

また、故意犯(わざとやった犯罪)ですので、飲酒等の影響で正常の運転が困難である等の認識が必要となります。本人に、そのような認識がない場合は、あくまでも過失犯であるとして争っていくことが考えられます。

4 関連条文

自動車運転死傷行為処罰法

(危険運転致死傷)
第二条  次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二  その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三  その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五  赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六  通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

第三条  アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2  自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
第四条  アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の懲役に処する。
(無免許運転による加重)
第六条  第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
2  第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。
3  第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。
4  前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

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弁護士宮本大祐コラム

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