リンカーン弁護士

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 「リンカーン弁護士」という映画を観ました。

 アメリカの刑事裁判は、陪審制を採用するなど、日本の裁判とは少し違いますが、証拠でもって事実を認定し、起訴事実を有罪にしようとする点は、一緒です。刑事裁判所における、弁護人の役割の本質は変わらないと思います。

 この話の中で出てくる日米の一番の違いは、「司法取引」があるかどうかという点でしょうか。「司法取引」とは、被告人が罪を認めたり、捜査に協力することで、求刑を軽減したり、罪状と取り下げるように、検察官と取引をすることです。

 司法取引は、裁判にかかる時間と費用を節約できたり、より重要な犯罪の捜査に役立つ情報を得られるというメリットがあります。

 その反面、犯人が重い刑を避けるために司法取引を行い、無実の者を有罪に陥れる偽証を行う可能性や、共犯者を告発するための偽証をするおそれがあるなどのデメリットがあります。

この映画では、無実の人が死刑を避けるために、懲役刑を受け入れてしまうという場面があります。リンカーン弁護士は、彼が無実であることに気付かず、死刑が懲役刑で済んだのだから良いだろう、と悦に入っていました。

ところが、後日、この事件の真犯人の弁護をする羽目になり、かつて司法取引をした被告人が無実だったということに気付くのです。無実の人を有罪にしてしまったという、刑事弁護人にとって最悪の事態。しかも、真犯人は、すべて承知の上で、あえてリンカーン弁護士に依頼したのでした。

弁護人には守秘義務があるため、彼が真犯人であることが判明しても、外に漏らすことはできません。巧妙に仕掛けられた罠に、リンカーン弁護士は、どう立ち向かうのか。続きは映画をご覧下さい。

刑事弁護をしていると、時々、明らかにやっているだろうと思われるような場合でも、「俺は、やっていない」などと弁解する被告人がいます。あまりにも不合理な場合、困ってしまうのですが、えん罪事件というのは、常識的には犯人としか思えないが、あらゆる偶然が重なってそう見えているだけであって、実は、無実なのだという場合が結構あります。

 そんな時、被告人の不合理な弁解を信じてあげることができるのは、弁護人しかいません。まずは信じて、裁判が終わるまでは、仮にそれが嘘だったとしても、つきあってあげるという精神がないと、リンカーン弁護士のように罠にはまってしまうことがあるのかもしれません。

 弁護士としては、冷や冷やドキドキの映画でした。

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弁護士宮本大祐コラム

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