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平成25年6月10日、名古屋地方裁判所で、脱法ハーブの影響による危険運転致死罪につき懲役11年の有罪判決が下されました。脱法ハーブによる同罪の有罪判決は全国初となります。
脱法ハーブを吸った後に車を運転し、女子高校生をはねて死亡させたという悲惨な交通事故です。弁護側は「被告は吸引の影響による危険性を認識しておらず、危険運転の故意はなかった」と主張し、過失による事故だとして自動車運転過失致死罪の適用を求めたようです。
交通事故の加害者に刑事責任が問われる場合の多くは、自動車運転過失致死傷罪として処罰されることが多いですが、交通事故による悲惨な死亡事故が多発したため、被害者遺族らの強い要望により、平成13年に危険運転致死傷罪が規定されました。
自動車事故というのは、通常、うっかり人をひいてしまった、つまり過失犯であることが多いのですが、危険運転致死傷罪は、危険運転の故意がある場合でないと成立しない故意犯であるという特徴があります。
例えば、被告人が、酒を飲むと正常な運転が困難な状態になると認識していなければなりません。信号無視の場合も、赤信号であることを認識した上で、ことさらに無視した場合でなければなりません。
脱法ハーブでいえば、ハーブを吸うと正常な運転が困難な状態になるということを、被告人が認識していなければなりません。
本件で弁護人が主張したのも、故意がないという点だと思います。それでは、どのように故意の有無を判断することになるのでしょうか。
アルコールの場合ですと、事故の態様のほか、事故前の飲酒量及び酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果等を総合的に判断することになるのでしょう。 この点、脱法ハーブの場合は、そもそも身体にどのような作用、影響があるのか、明確でないことが多く、効果にも個人差が大きいと思われます。また、お酒のように、飲酒検知器もないし、客観的な証拠に乏しいという問題点があります。
先ほどの判決は、そのような中で、被告人の故意を認め、有罪判決を下した点に意義があります。報道でしか見ていませんが、判決は、被告人が、事故前にインターネットで吸引の後遺症について検索し、友人からも「脳みそがクラクラする」と聞いていたことなどから「正常運転が難しいことを認識していた」と認定したようです。事故前の行為にまで遡って、被告人の薬物に対する認識を認定したのですね。
なお、脱法ハーブは、規制の網をくぐり抜けるために、新しい成分が次々と開発され、いたちごっこが繰り返されています。しかし、危険運転致死傷罪にいう「薬物」とは、必ずしも、規制薬物とは限りません。睡眠薬や接着剤など、運転者の精神的又は身体的能力に影響を及ぼす薬理作用を有するもの全般がこれにあたります。
車がくらくらするような状態で、車なんか運転するなよ~ということですね。 そんな状態で運転したら、「うっかり」「過失」で人をひいたなんていう言い訳は許されないぞ、ということです。被害者のご遺族が、殺人と同じだ、とご主張されるのもごもっともなわけです。
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