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平成28年6月から,刑の一部執行猶予という制度がスタートしました。
刑の一部執行猶予とは,犯罪を犯した者に対し懲役刑を科する場合に,その刑の一部を一定期間猶予する制度です。
その目的は,刑務所などの施設内処遇と保護観察などによる社会内処遇を連携させて,受刑者の社会復帰を促進する点にあります。
誤解しやすいところなのですが,一部執行猶予は,全部執行猶予と実刑の「中間刑」ではないということです。すなわち,従前,全部執行猶予とされた事案は全部執行猶予のままであり,実刑相当であった者について再犯防止の見地から必要かつ相当な場合に適用される制度だということです。
法令上は,「刑法」と「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」に規定されています。
刑法の規定では,①前に禁錮以上の実刑に処せられたことがない者,②前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても,その刑の全部の執行を猶予された者,③前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても,その執行を終わった日等から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者(①②③を前科要件と言います)が,3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において,犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる,と規定されています。
性犯罪や暴力事犯等への適用が期待されます。
これに対し,薬物に関する特別法の場合は,覚せい剤,大麻等の薬物使用等の罪について適用されます。
薬物に関する特別法の場合は,必ず保護観察を付さなければなりませんが,刑法の場合は,保護観察は任意です。ただし,特別法の場合,前科要件から漏れる場合にも適用があり得ます。
全部実刑で刑期途中に仮釈放される場合と比べると,一部執行猶予の場合,猶予期間の終期が長くなるため,必ずしも実刑よりもメリットがあるとは言えない部分もあります。
弁護人としては,一部執行猶予を求めるべきか否か迷うケースもあります。被告人の希望も踏まえながら,個々の事案における必要性,相当性などを検討した上,再犯防止のためにふさわしいのか否か,慎重に判断することが求められます。
平成28年8月20日
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