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「サイド・エフェクト」という映画を観ました。
精神科医がうつ病患者に処方した新薬の副作用により、患者が夫を殺してしまうというような物語です。この映画の中で、患者は、新薬の副作用による心神喪失が認められて無罪判決を受けました。
また、前橋地裁で、当時3歳の長男の顔に布団をかぶせて窒息死させた母親に対する裁判員裁判の判決がありました。この裁判では、被告人が犯行当時心神耗弱状態にあったことが認められ、懲役3年、保護観察付執行猶予5年の判決となりました。
このような裁判や映画の中で問題となった、心身喪失や心神耗弱とはどのようなものなのでしょうか。
刑法は、犯罪行為をした者に刑罰を科すには、行為者に責任能力がなければならないとしています(「責任なければ刑罰なし」)。
責任能力とは、①行為の違法性を弁識し(弁識能力)、かつ、②それに従って自己の行為を制御する能力(行動制御能力)のことをいいます。これらの能力の有無、程度により心神喪失と心神耗弱は区別されます。
心神喪失とは、精神の障害により①弁識能力を欠く場合、又は、②行動制御能力を欠く場合をいいます。つまりは、自分が悪いことをしていることを認識していなかったり、悪い行為をしないように自分で歯止めをかけることができなかったりする場合をいいます。
心神喪失者がした行為は罰せられません(刑法39条1項)。何が悪い行為かわからず、また、悪い行為をすることを自分で止められない者に対して、あなたは悪い行為(犯罪行為)をしたのだから、刑罰を受けてくださいとは言えないからです。
心神耗弱とは、精神の障害により①弁識能力が著しく低い場合、又は、②行動制御能力が著しく低い場合をいいます。
心神耗弱者の行為は刑が必要的に減刑されます(同39条2項)
映画では、患者が心神喪失者を演じていたことが発覚します(ネタバレゴメンナサイ)。映画の結末は秀逸ですが、実際の裁判でそのような事態が起こることはあってはならないことです。
一般の方の感覚だと、精神障害がある場合に無罪になったり刑が軽くなるなんておかしいのではないか、というご意見の方もあることでしょう。この話題が映画でよく取り上げられるのも、そのような関心が元になっているのかもしれませんね。
しかし、実際の刑事裁判において、心神喪失が認められるためのハードルは結構高いというのが実感です。詐病の問題も、究極的にはわかりませんが、多くの場合、鑑定医によって見破られていると思います。
このような制度の是非には議論があるところですが、現状は上記のような感じになっています。
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