前科とは

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1 前科とは

前科というのは、実は法律上の用語ではありませんが、一般的には、前に刑に処せられた事実のことを指します。刑に処せられたとは、有罪の確定判決のことであり、刑務所に行くような懲役刑だけでなく、罰金刑や執行猶予が付いた場合も含みます。
恩赦などにより刑の言い渡しの効力が失われた場合は、前科ではありません。ただし、この場合は、以前に刑罰に処せられた事実は残りますので、検察庁の犯歴票から消えることはありません。

2 前歴との違い

前歴とは、有罪判決を受けなくとも、逮捕、補導されたり、捜査機関により被疑者として捜査の対象となった事実や、未成年時の非行事実のことです。前科と異なり、法律上の不利益を受けることはありません。

3 前科による不利益

(1)選挙権・被選挙権の制限

禁錮以上の刑に処せられた場合は、公職選挙法により、選挙権・被選挙権が制限されます。

公職選挙法第11条1項

  • 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
  • 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者
    (刑の執行猶予中の者を除く。
  • 公職にある間に犯した刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十七条から第百
    九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰
    に関する法律(平成十二年法律第百三十号)第一条の罪により刑に処せられ、
    その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり
    若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又は
    その刑の執行猶予中の者
  • 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪に
    より禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者

(2)法律上の資格制限

特定の資格や職業について制限されることがあります。
例えば、弁護士や学校教員等は、禁固以上の刑が欠格事由となっています。また、医師や薬剤師は罰金以上の刑で免許を失うことがあります。

(3)海外渡航の制限

禁固以上の刑に処せられたような場合は、パスポートの発行を受けられなかったり、返納を命じられることがあります(旅券法13条1項各号、19条1項2号)。罰金刑の場合は、パスポートの発行は受けられるようですが、渡航先の入国審査によりビザが受けられないこともあります。また、海外に赴任するような場合、犯罪経歴証明書の交付を求められることがあります。

(4)就職上の不利益

本来であれば、履歴書の賞罰欄に前科を記載する必要がありますが、記載すれば就職上、極めて不利益であることは明白です。そのため、あえて記載しない方も多いようです。しかし、前科を隠して入社した場合、経歴詐称となり懲戒の対象となるリスクはあります。また、懲役刑により経歴上空白期間ができてしまう場合、何をしていたのか説明に窮することもあるでしょう。

(5)記録に残るのか

市町村の犯罪人名簿、検察庁の犯歴票に記録されます。犯罪人名簿には、罰金刑以上の刑に処せられた者が記載されます。刑の言い渡しの効力が消滅した際に記載が削除されます。例えば、罰金刑の場合は、5年以上経過したときに削除されます。犯歴票は、拘留や科料などの軽微な罪についても記載されます。犯罪人名簿と異なり、刑の言い渡しの効力が消滅しても削除されず、該当者が死亡するまで一生消えることはありません。戸籍や住民票に載ることはありません

刑法

(刑の消滅)
第三四条の二禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。2刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
(猶予期間経過の効果)
第二七条刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

(6)会社や知人に知られてしまうのか

前科情報は、極めてセンシティブな情報ですので、一般の人が犯罪人名簿や犯歴票を見ることはできません。弁護士や探偵が調査をすることも不可能です。この点、最高裁判決でも、前科は、人の名誉・信用に深く関わるものであることから、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するとして、弁護士からの前科情報の照会に漫然と応じた行為を違法と評価したものがあります(最高裁昭和56年4月14日判決)。

しかし、マスコミによる報道があった場合は、インターネット上でいつまでも検索することができてしまい、大きな不利益となります。逮捕されずに在宅で捜査を受けているような場合は、会社や知人に知られてしまうことはほとんどないのですが、マスコミ報道がきっかけとなり一気に情報が拡散してしまうということがあります。

この点、検索履歴の削除請求について、Googleを相手に、検索結果の削除を求める仮処分の申し立てを認める決定がなされました(平成27年12月22日さいたま地裁決定)。これは、児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で罰金五十万円の略式命令を受けていた男性が、Googleの検索により更生を妨げられているとして、その削除を求めたものですが、裁判所は,「逮捕の報道があった人も更生を妨げられない利益がある」「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と判断し、削除を認める決定を出したものです。もっとも、検索サイトには知る権利や表現の自由を確保する公益的な役割があるとされているため、削除が認められるためのハードルは高いのが現状です。

4 前科をつけないようにするには

被害者のいる犯罪であれば、被害者と示談することで不起訴処分となることがあります。特に、親告罪といって、検察官が事件を起訴するために、必ず被害者の告訴が必要となる犯罪があります(強制わいせつ罪、名誉毀損罪など)。このような犯罪の場合は、被害者から告訴取消書を取り付けることにより、不起訴となります。
また、被害者のない犯罪でも、軽微な犯罪や社会内で更生の機会を与えた方が適当な場合は、不起訴となることもあります。
また、起訴されてしまった場合でも、無罪判決となった場合は、前科はつきません。

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弁護士宮本大祐コラム

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