強制起訴!

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 長野県松本市の柔道教室で、教え子に投げ技をかけさせ、重い障害を負わせたとして、柔道の元指導員が業務上過失致傷罪で強制起訴されました。

 中学校で武道が必須科目となったため、今後も柔道事故が起きる可能性が高く、関心が集まっています。

 この事件でもう一つ注目すべきなのが、起訴する判断をしたのが、検察官ではなく検察審査会であるという点です。長野地検は、2度にわたり嫌疑不十分で不起訴としたのですが、その後、検察審査会が、起訴すべきとする議決をしたため、強制起訴されました。

 容疑者が逮捕され、取り調べを受けて、検察官に起訴されて裁判となり、裁判官によって有罪判決を受ける、というのが容疑者が有罪判決を受けるまでの一般的な流れです。

 この流れの中で、特に重要なのが検察官が起訴するかどうか、つまり、ある事件を裁判にかけるかどうか、という点です。

 刑事訴訟法上、起訴をする権限は検察官が独占しており、起訴独占主義と言われています。また、ある事件を起訴するか否かは、検察官の裁量にゆだねられています。これは起訴便宜主義と言います。

 そして、日本の裁判では、検察官が起訴した事件は、99.99%有罪となります。逆に言うと、検察官は無罪になる可能性のある事件は起訴しないということでもあります。

 本来、有罪か無罪かは、裁判官が決める事柄です。しかし、グレーの事件までどんどん起訴して無罪判決が乱発するようなことが本当に良い司法といえるでしょうか。
たくさんの無実の人が裁判にかけられて、大変な苦痛を被るということになりかねません。無罪判決を得たからといって、名誉回復されるとも限りません。そうであれば、無罪になりそうな人は、全部、起訴しないという考え方も一定の合理性があるのかもしれません。もっとも、本来、裁判所が決めるべき事柄を検察官が決めているかのようにみえるという批判もあります。

 この検察官の起訴独占主義の唯一の例外が、検察審査会制度です。

 検察審査会って、どれだけスゴイ人たちの集まりなのでしょうか……

 実は、普通の人たちなのです。選挙権のある国民の中から管轄ごとに無作為に11人が選ばれ検察審査会を構成します。つまり、これを読んでいる皆さんも、来年は選ばれるかもしれないのです。

 検察審査会制度は、戦後間もない頃からあるのですが、以前は、審査会が起訴相当としても実際に起訴するか否かは、検察官の裁量にゆだねられていました。しかし、平成21年の改正で、検察審査会が起訴すべきとした議決に強制力が付与されるようになり、被害者の声が一段と反映されることになりました。

 裁判所のHPによると、これまで約16万件の事件が審査されており、そのうち起訴にまで至ったのが1500件ほど、議決の割合は、起訴相当1.5%,不起訴不当9.6%,不起訴相当56.7%,その他32.2%となっています。

 とはいえ、検察官が起訴すべきでないと判断した事件を起訴するわけですから、無罪判決も出ています。そのような状況を受けて、検察審査会制度に対する批判も出ているところです。

 制度の是非はともかく、犯罪の被害に遭われた方で、検察官の不起訴の判断に納得がいかないという方は、そのような制度もあるんだということは覚えておいて損はないでしょう。

→検察審査会への申立てについてはコチラ

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弁護士宮本大祐コラム

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