盗撮に失敗した場合~未遂でも処罰されるか

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ニュースや新聞で「未遂」という言葉がよく使用されますが、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?

条文によると、「未遂」とは、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」場合と規定されています(刑法43条本文)。

 

人を殺したり、傷つけたりするなど、法律によって守るべき利益(法益といいます)が侵害された場合に犯罪として処罰されます。つまり、犯罪として処罰されるためには、法益を侵害する結果が発生することが必要なのです。

しかし、「未遂」は「結果」が発生しないのに処罰されることとなります。

 

例えば、AがBを殺そうとナイフで切り付けた。しかし、Bは死亡しなかったという場合、殺人「未遂」罪となります。殺人罪として処罰されるためには、「人を殺した」という「結果」が発生する必要があります。しかし、Aは、Bを死亡させていませんから処罰されないのでしょうか。それはおかしいですね。

では未遂であるのに処罰される根拠はどこにあるのでしょうか。

 

まず、刑法の持つ法益保護機能があります。

文字通り、法益を保護しようとする機能です。確かに、Bの生命に対する侵害「結果」は発生していません。しかし、ナイフで切りつけられるというBの生命を侵害する危険性の高い行為は行われています。

このような行為も処罰しなければ、国民の法益が保護されなくなるでしょう。そのため未遂を処罰する必要があるのです。

もっとも、結果が生じないのに処罰されるわけですから、どのような場合に未遂でも処罰されるのか、法律ではっきりと規定されていなければなりません。未遂が処罰される場合には、かならず条文上明記されています。

それでは、盗撮をしようとスカートの下からスマートホンを差し入れたが、女性に気づかれて撮影することができなかった、という場合、盗撮未遂罪となるのでしょうか。

答えは、「否」です。

盗撮が処罰されるのは、いわゆる迷惑防止条例に「衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること」(同条例2条2項2号)と規定されているのが根拠となっています。しかし、未遂を処罰する規定はありません。

もっとも、上記のような場合、「卑わいな言動」(同項3号)を処罰する規定はありますので、盗撮をしようとして失敗した場合は、やはり迷惑防止条例違反で罰せられることが多いです。

このように、なんとなく危険な行為だから処罰されるというわけではなく、「未遂」も、さまざまな根拠に支えられて処罰可能となっているのです。なぜ未遂なのに処罰されるのか、ニュースを見る際に、ちょっと気にしてみると面白いかもしれません。

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弁護士宮本大祐コラム

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