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清原和博選手,ASKAさん,酒井法子さん,高知東生さんなど,覚せい剤事件で逮捕される著名人が後を絶ちません。
一般の方も,ワイドショーのコメンテーターの発言などを聞いて,覚せい剤依存症から立ち直るのが至難の業だということはご存じのことと思います。
果たして,本当に,覚せい剤依存症から立ち直ることは不可能なのでしょうか。今回は,その治療法について解説致します。
民間の回復施設として有名なのが,「ダルク(DARC,Drug Addiction Rehabilitation Center)」です。
ダルクでは,覚せい剤依存症の人たちが共同で生活し,グループワークなどを行います。グループワークとは,自己の体験や更生の決意などを皆の前で語って,言いっ放し,聞きっぱなしの討論をするのです。このような共同体験を経て,回復に成功している先輩から影響を受けたり,皆で支え合うことで覚せい剤を止める動機付けを強めたりすることで,回復に繋げていきます。
日本全国に40カ所ほどあり,比較的アクセスしやすいです。
次に,スマープ(SMARPP,Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program)と言って,のせりがや病院(神奈川県立精神医療センター)で開発された,認知行動療法を応用した治療プログラムがあります。
これは厚生労働省においても,一定の効果が認められると判断され,全国の精神保健福祉センターでプログラムが受けられるようになりました。
マトリックス研究所のマトリックス・モデルという治療プログラムを基礎に,認知行動療法や動機付け面接法などと応用して,医師などの専門家の指導の下,依存症の知識や具体的な対処スキルを習得することを目指します。
また,条件反射制御法も注目されています。
これは,千葉県にある下総精神医療センターで実施されている治療プログラムです。
パブロフの犬のように,条件反射的に覚せい剤を濫用しているというメカニズムに注目し,悪しき条件反射を弱めるとともに,渇望を感じたときに薬物を使用しないという新しい条件反射を作るという訓練をしていきます。
具体的には,特定の条件の下,「私は,今,覚せい剤をやれない」と宣言を繰り返します。そして,これが定着した段階で,疑似注射器を使用して腕に注射する真似をしたり,ガラスパイプを使用して覚せい剤ではなく砂糖や食塩をあぶる動作をして疑似摂取を行います。すると,実際に覚せい剤を使用したときと同じ動作をしても,快感を得られないということを学習し,やがて渇望を感じなくなります。
そして次に,従前,覚せい剤を使用していた状況を詳細に思い出して回想します。回想しても大丈夫だということを確認してから,自宅で同様のステップを繰り返し,実社会でも再発が起こらないことを徐々に確認していきます。
治療方法は,いろいろなモデルが試行錯誤されている状態であり,どれか一つをやれば確実に治るというものではありません。
例えば,スマープや条件反射制御法を試みた後に,ダルクに入所してみるとか,様々な方法を組み合わせる必要がある場合もあります。
ただ,いずれにせよ重要なことは,刑罰よりも治療を優先すべきという視点を持つことです。そして,本人の決意のみならず,家族や専門家などの周囲のサポートを得ることが大事です。
平成28年11月4日(金)
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