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 ハームリダクションという言葉を聞いたことがありますか?

 Wikipediaによると,「ハームリダクション(harm reduction)とは,個人が,健康被害や危険をもたらす行動習慣(合法違法を問わない)をただちにやめることができないとき,その行動にともなう害や危険をできるかぎり少なくすることを目的としてとられる,公衆衛生上の実践,方略,指針,政策を指す」とされています。

 例えば,覚せい剤を例にとると,「ダメ絶対覚せい剤」という標語が示すように,覚せい剤は絶対悪であり,絶対に摂取してはならない,断薬すべきである,そして厳罰に処するべきであるという考え方があります。
 しかし,実際に覚せい剤を断薬することは難しく,再犯をして刑務所を出たり入ったりするという現状があります。果たして,覚せい剤依存症になってしまったとき,あるいは社会の中に覚せい剤依存症者がたくさんいるとき,断薬,厳罰という対処が正解なのでしょうか。

 この点,ハームリダクションという考え方は,必ずしも断薬することを求めるのではなく,むしろその使用がもたらす被害(harm)を減少(reduction)することに着目します。
 被害というのは,薬物使用により生じる健康,社会,経済上の悪影響のことです。
 覚せい剤の使用により健康を害するのは説明するまでもありません。覚せい剤依存症による健康被害の他,注射の回し打ちによるウイルスの感染なども問題になります。
 社会的な被害の例としては,覚せい剤依存により,仕事が続けられなくなったり,ホームレスになる,地域で感染症が広まる,覚せい剤購入のため窃盗などの他の犯罪に及ぶ,注射器具などが公共の場で捨てられていて衛生環境が悪化することなどがあります。
 経済的な被害には,感染症の対策のために医療費の公的負担が増えたり,無職者のために福祉分野の公的負担が増えたり,麻薬の取り締まりのために公的資金が投入される等があります。

 そしてハームリダクションは,これらの害を減らすために,断薬,厳罰ではなく,感染症を防ぐために自治体が注射器を配布したり,麻薬常習者のために薬物使用センターを作ったり,ヘビードラッグに替わる代用物質を提供したり,その他治療や福祉サービスを提供することで,社会全体の,あるいは個人の害を減らしていこうとする試みです。
 
 刑務所に入れるだけでは,依存症者の社会復帰を困難にするだけであり,かえって再犯を促してしまったりすることもあります。そうすると,受刑者1人当たり年間300万円といわれている公的費用を国民が負担しなければなりません。個人にとっても社会全体にとっても不幸なことです。
 また,薬物を摂取することは,一般的には,快楽を求めているように受け取られることが多いようですが,実際には,社会的に苦境に追い込まれている人が,ストレスを緩和するために薬物を摂取していることが多くみられます。つまり,薬物が快楽を与えてくれるのはなく,苦痛を除去するために自己治療薬として使用されていることが多いのです。薬物依存者は楽しくて薬物を摂取しているわけではないのです。
 そのような場合,断薬というアプローチでは,苦痛の原因を除去しない限り,再犯してしまう可能性が高いでしょう。また苦痛の原因を取り除くことも,決して容易ではありません。
 また,あまり触れられないことですが,覚せい剤を含め,薬物を摂取したら必ず依存症になるわけではありません。
 そこで,健康被害のより少ない代替物質を摂取することにより,害を減らすという発想が出てくるのです。社会的にみても,刑務所に入る人が1人減り,福祉の問題や治安の悪化を防ぐことができるかもしれません。
 えっ,自治体が注射器や薬を配るのか,と意外に思われるかもしれませんが,断薬や厳罰よりも比較的マシな状態にもっていくという発想がハームリダクションという考え方なのです。
                                          以上
平成29年9月11日(月)

(参考文献『ハームリダクションとは何か』編著者:松本俊彦,古藤吾郎,上岡陽江 発行者:中外医学社)

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