性依存症とは

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 当事務所では,盗撮,痴漢,強制わいせつなどの性犯罪のご依頼を受けることが多くあります。
 性犯罪者全般をみると,必ずしも再犯率が高いというわけではないのですが,中には,同種の犯行を繰り返してしまう人もたくさんいます。このように性犯罪や性問題行動を反復継続してしまう症状のことを性依存症,性嗜好障害などと呼んでいます。
 これは,WHOの国際疾病分類第10版(ICD-10)や,アメリカの精神医学界が公表している精神障害の診断と統計の手引き第5版(DSM-Ⅴ)においても,性依存症をパラフィリア障害群として,治療を必要とすべき精神疾患として捉えています。

 このような,性依存症は,治療することが可能なのでしょうか。
 この点,一部の治療施設では,リラプス・プリベンションモデルという欧米で多くのエビデンスが集積されている治療モデルを基礎とした認知行動療法を応用した治療が試みられています。リラプス・プリベンションモデルとは,直訳すると再発防止という意味ですが,リラプス(再発)に陥りやすいリスク状況を特定して,それを排除することと,排除できないものについては対処方法を学習する(コーピング)というものです。

 具体的には,専門家によるカウンセリング,同種の症状を抱えた者同士によるグループワークを継続することにより,強迫的性行動に出るまでのプロセスを自覚し,認知の歪みに気付いて行動を修正すること,被害者の気持ちを知ることなどを学習します。
 また,重要なのは継続するということです。一般的に依存症は完治することが難しく,回復するためには継続してプログラムを続けるということが重要です。
 この点,刑務所で行われているプログラムは,最長で8ヶ月間であり,期間として十分とはいえません。また,刑務所という再犯を犯し得ない隔離された空間で実施されているため,出所後にプログラムの効果が持続するのかといった問題もあります。
 
 残念ながら,当事務所に刑事弁護を依頼された方の中にも,せっかく示談をして不起訴になったにもかかわらず,しばらくして再犯をしてしまうというケースがあります。弁護士として,とても虚しく感じるところではありますが,再度,ご依頼頂けた場合には,さらに手厚く再犯防止のための取り組みをしなければなりません。

 そこで,当事務所では,常習的に同種の性犯罪を繰り返す傾向のある方には,できるだけ社会内で,長期間のプログラムを受講するようにお薦めしています。具体的な事例により治療方法や治療期間は様々ですが,専門家の指導にしたがって,少なくとも1年以上のプログラムを受講すべきではないかと考えています。
 ただ単に刑を軽くすれば良いという発想ではなく,今後の人生を豊かに過ごすためにも,再犯防止という視点は極めて重要です。

平成28年10月17日(月)

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弁護士宮本大祐コラム

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