強制わいせつ罪の非親告罪化

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強制わいせつ罪の非親告罪化

 アイドルグループ・TOKIOの山口達也氏が強制わいせつ罪で送検され,不起訴処分となりました。
 マスコミ報道によると,酒に酔った山口氏が番組で共演した女子高生を自宅に呼んだ上,無理矢理キスしたという容疑のようです。
 事件後,被害者と示談が成立し,被害届も取り下げられたとのこと。

 昨年の刑法改正により,強制わいせつ罪を起訴するのに,被害者の告訴は必要なくなりました。しかし,これは告訴が必須の要件ではなくなったということであって,被害者が望んでいないのに事件が起訴されることは通常はありません。
 起訴されて裁判になれば,被害者が公判に出廷して証言を求められるなど,負担がかかるからです。性犯罪の被害者が,警察で事情聴取された上,さらに,公判で証言を求められるとなると,ただでさえ忘れたい記憶を再度思い出すことになり,また傍聴人に聞かれている状況の中で性的な質問をされるなど,二次被害に結びつく可能性があります。そのため,検察官は,被害者の意思に反してまで起訴しないのです。
 山口氏の場合も,起訴が見送られ,不起訴となりました。不起訴の中でも起訴猶予といって,犯罪自体は成立するが諸事情から起訴が見送られるケースと思われます。

 一つ気になるのは,山口氏が飲酒癖を理由に入院するなど治療をしていたという点です。事件当時も退院直後であるにもかかわらず焼酎一本飲んでいたとのこと。アルコール依存症が犯行に影響を与えた可能性があります。しかしこれは,依存症だから罪が軽くなるという話ではありません。犯行に寄与した原因があるのなら,再発防止のためにも治療する責任があるということです。依存症だからといって,被害者に対する責任や犯罪をおかしたことに対する責任は何ら変わらないのです。

 性犯罪は,アルコール依存症や不眠症,うつ病が原因となって,生活リズムが崩れ,それが犯行の遠因になっていることがあります。病気だから許されるという話ではないのですが,病気を治療することでその後の再犯を防ぐことができるという効果が期待できる場合があります。

平成30年5月2日(水)

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弁護士宮本大祐コラム

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