刑務所と福祉

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 刑務所は悪い人が入るところだから,快適であってはいけない。社会から隔離して,厳しい規律を課して,もう二度とこんな場所に来たくないという思いを持って出所してもらわなければならない……そのように考えている方が多いのではないでしょうか。

 私は,毎年,各地の刑務所を見学していますが,最近は,受刑者の高齢化が進み,まるで老人ホームのような光景に出くわすこともあります。当然,介護を担当する人材も必要となっています。
 また,知的障害者の割合も増えています。受刑者の4人に1人がIQ70以下と言われています。軽度精神遅滞に該当し,小学校の勉強はできるが中学校は困難という程度のレベルです。高齢者であり,かつ,知的障害を抱えた人もいます。
 そのような光景を見ている,まるで刑務所が福祉施設のようにもみえてきます。

 このような人たちは,刑務所を出ても,親や兄弟もなく,戻る場所もないまま,再び犯罪を犯して刑務所に舞い戻ってくる悪循環を繰り返すことが多くあります。前科10犯の凶悪犯と思ったら,食べていくために万引きを繰り返している老婆だったということが頻繁にあるのです。中には,刑務所に入るために,おにぎりを盗んだというケースもあります。
 出所後の行き先が決まっていなくても,満期になれば強制的に出所することになります。そして誰も助けてくれません。あるいは,助けを求める知恵もありません。刑務所を運営する費用は当然,税金で賄われています。
 このような状況を改善するために,最近の刑務所は,出所後に戻る場所を探してあげたり,就職先を探すお手伝いをしたりもします。
 また,各都道府県に設置されている地域定着支援センターでは,高齢者や知的障害者など,福祉的な支援を必要とする出所者について,福祉的なサービスに繋げる事業をしています。
 懲らしめるべき受刑者に,就職のあっせんをしたり,生活の心配をしてあげるなんておかしいと思われるかもしれませんが,出所者を支えるサービスを展開していかないと,結局,新たな犯罪が発生し,刑務所に舞い戻ってきてしまうのです。
「反省は1人でできるが,更生は1人ではできない」(浜井浩一教授)などと言われたりもします。
 そして,重要なのは,出所後の福祉だけではありません。そもそも,犯罪を犯す前の福祉が充実していれば,犯罪を犯す必要のなかった人たちがたくさんいるのです。この点については,次回のコラムでお話しします。
                                                                       平成28年8月31日(水)

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弁護士宮本大祐コラム

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