交通事故犯罪~危険運転致死罪と自動車運転死傷行為処罰法

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今年6月、無免許運転中にてんかん発作により、対向車と衝突事故を起こして運転手にけがを負わせた男性に対して、札幌地裁が、懲役1年10月の実刑判決を下しました。

 

この裁判は、今年5月に施行された自動車運転死傷行為処罰法が適用された全国初のケースです。判決理由において、裁判官は、持病を持つ者が運転することの危険性と行為者自身がそれを認識している点および免許を取得したことがないにもかかわらず平然と自動車の運転をしていた点を強く非難しました。

 

今回は持病を持つ者が起こした類似事例をご紹介しながら、交通事故犯罪に対する法改正の過程をみていきたいと思います。

 

平成23年、てんかんの持病を持つ男性が薬の服用を怠ったため、運転中に発作を起こし、集団登校中の児童6人をはねて死亡させた事故が起きました。後に持病を申告せず免許を取得していたことも判明しました。

 

男性は自動車運転過失致死罪(当時、刑法211条2項)で逮捕、起訴され、裁判では懲役7年の実刑判決が下されました。当初、被害者が児童6名である点、過去に何度も持病が原因の交通事故を起こしている点、さらには、当日の薬の服用を怠った結果の事故である点などから、同罪よりも重い危険運転致死罪(当時、刑法208条の2)によって処罰すべきではないかと検討されました。

 

しかしながら、当時の法律で規定されていた危険運転致死罪は、成立するための要件が非常に曖昧かつ厳格で、よほどの場合でなければ適用されませんでした。また、通常、交通事故は「過失(うっかり)」により発生するものですが、危険運転致死罪の場合は、「故意(わざと)」という要件が立証されなくては成立しません。「故意」の立証はハードルが高く、本件でも、男性に適用することはできませんでした。

その後、夜通し運転していた無免許の少年が、居眠りにより10人を死傷させた事件ですら適用は回避されています。

 

このような不都合性を克服するために新たに制定されたのが、自動車運転死傷行為処罰法です。同法では、あらかじめ政令で定められた特定疾患の影響で、走行中、正常な運転に支障が生じる恐れ(危険性)があるにもかかわらず、それを認識しながら自動車を走行して、結果的に正常な運転に支障が生じた場合に適用される病気運転致死傷罪(自動車行為処罰法3条2項)が新設されました。また、無免許に関しても刑が加重される旨規定されています(同6条)。

 

今後、悪質な交通事故事犯に対しては、従前よりも、厳しく処罰される例が増えてくることでしょう。悪質な交通事故に厳罰が科されることはやむを得ないことかもしれません。しかし、持病があるから、直ちに刑が重くなるということではありませんので、誤解がないようにしたいところです。

 

当事務所では、愛知県、岐阜県、三重県の交通事故に遭われた被害者の方、交通事故を起こしてしまった加害者の方、双方からの相談をお受けすることができます(同一事故の場合は不可)。お気軽にご相談ください。

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弁護士宮本大祐コラム

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